AIでスプレッドシートを作るなら、「何を管理するか」と「どの結果なら正しいか」を先に決めましょう。
列名や数式を生成できても、空欄、重複、行の追加で集計が崩れることがあります。
この記事では、案件管理を例に、入力欄・計算欄・集計欄を分けて設計する方法を説明します。
架空データを入れた検証用の表を作り、正常な入力以外も試した結果を紹介します。
案件ごとの進捗や作業時間を、自社に合う表で管理したい方へ。現在の管理方法から、必要な列と確認項目を整理します。
管理したい仕事と判断を決める
一行を「一案件」にするか「一作業」にするか
表の見た目より先に、一行が何を表すかを決めます。
案件の期限を管理したいのか、担当者の日々の作業時間を集計したいのかによって、適切な単位が変わります。
例えば、一案件を一行にした表へ、同じ案件の打ち合わせと制作作業を別々に追加すると、案件数を二件と数えるおそれがあります。
作業ごとに記録する場合は、案件IDとは別に作業IDを設け、案件数と作業件数を区別します。
この記事の例では「一行=一案件」とします。
複数担当者の日報をまとめる表ではなく、案件の期日と予定・実績時間を確認するための小さな管理表です。
表を見て何を判断するかを絞る
最初から売上、原価、請求、顧客情報まで同じ表に詰め込むと、入力ルールと閲覧権限が複雑になります。
まずは、日々の確認で使う判断を三つに絞ってみましょう。
| 確認したいこと | 必要な情報 | 表に出す結果 |
|---|---|---|
| 期限を過ぎた未完了案件はあるか | 期日・状態・判定日 | 期限超過の表示と件数 |
| 予定より時間がかかったか | 予定時間・実績時間 | 実績から予定を引いた差分 |
| 同じ案件を二度登録していないか | 案件ID | 重複する行の表示 |
担当者別の稼働率や損益まで判断したい場合は、勤務時間や単価など別の定義が必要です。
今回の差分時間だけで、生産性や利益を評価することはできません。
アセントウェブ代表の動画では、自分用に作成したROI・損益管理シートの紹介があります。
32分23秒付近からの紹介で、今回の案件管理表とは別のシートです。作成済みの画面の紹介であり、この記事のテストを実施する動画ではありません。
入力・計算・集計を分けて設計する
担当者が入力する列を定義する
列名だけでなく、入力する値の種類、空欄を許す条件、値を決める人まで書き出します。
以下は、今回の検証用シートで採用した設計例です。
| 列 | 入力内容 | ルールと空欄の扱い |
|---|---|---|
| A:案件ID | PJ-001など | 一案件に一つ。半角英数字とハイフンを使う |
| B:担当 | 担当Aなど | 担当者を決めて入力。実運用では担当者一覧とそろえる |
| C:期日 | 2026-10-22など | 表計算ソフトの日付として入力。未確定なら空欄を明示する |
| D:状態 | 未着手・進行中・完了・保留 | 選択式にして表記をそろえる |
| E:予定時間 | 6などの数値 | 単位は時間。0以上を使用する |
| F:実績時間 | 7.5などの数値 | 未入力と0時間を区別する |
「7時間30分」という文字と「7.5」という数値を混ぜないことが大切です。
今回の表では数値の時間に統一し、文字が入った場合は計算せず確認を促します。
案件IDの重複判定にはCOUNTIFを使います。
COUNTIFでは「*」「?」が検索条件の特殊な文字として扱われるため、この例の案件IDには使わないルールにしました。仕様はGoogleのCOUNTIFヘルプで確認できます。
数式で求める列を入力欄から分離する
G〜I列は担当者が手入力する欄にせず、入力内容から計算・確認する欄とします。
入力欄を淡い黄色、数式欄を灰色に分けると、操作する場所が伝わりやすくなります。
| 計算欄 | 計算・判定の考え方 | 通常以外の表示 |
|---|---|---|
| G:差分時間 | 実績時間-予定時間 | どちらかが空欄なら「未入力」、文字や負数なら「入力確認」 |
| H:ID照合 | A列の同じ案件IDを数える | 同じIDが二行以上あれば各行に「重複」 |
| I:期日判定 | 未完了かつ期日が判定日より前か確認 | 空欄は「期日未入力」、文字は「日付確認」、期限超過はその旨を表示 |
集計欄には、I列の「期限超過」の数と、H列の「重複」の数を表示します。
同じIDが二行あれば重複行数は2です。「重複している案件の種類が二つ」という意味ではありません。
また、この例では「保留」でも期日を過ぎたら期限超過として扱います。
保留案件を期限管理から外したい場合は、数式を変える前に、その業務ルールを決めてください。
AIに表と数式の案を作らせる
完成イメージと期待する結果を一緒に渡す
「案件管理表を作って」だけでは、AIが担当人数、列の意味、集計対象を補ってしまいます。
先に決めた条件を、次のように渡すと確認しやすくなります。
| AIに伝える項目 | 今回の依頼文の例 |
|---|---|
| 利用環境 | Googleスプレッドシートで使用する。日本語の画面で運用する |
| 一行の意味 | 一行を一案件とする。明細や日報はこの表に入れない |
| 入力列 | A〜F列を案件ID、担当、期日、状態、予定時間、実績時間にする |
| 計算列 | G列は時間差分、H列はID重複、I列は期日判定にする |
| 空欄と0 | 実績が空欄なら未入力。予定0・実績0なら差分0を返す |
| 対象範囲 | 8〜107行の100行。108行目以降への拡張方法も説明する |
| 出力してほしいもの | 数式、入力ルール、各式の説明、確認用データと期待する結果 |
AIが返した数式は、いきなり実務の表へ貼り付けず、コピーした検証用ファイルへ入れます。
列番号が違っていないか、集計が固定範囲になっていないか、日付の基準が何かを確認します。
「エラーをすべて空欄にする」という指示は避けましょう。
原因の異なる未入力、数式エラー、重複が同じ空欄になると、担当者が異常に気づきにくくなります。
ExcelとGoogleスプレッドシートの環境をそろえる
数式の案をチャットで作る方法と、表計算ソフト内のAI機能を使う方法があります。
すでに使っている環境に合わせて選ぶと、共有や引き継ぎの変更を抑えられます。
GoogleスプレッドシートのGeminiは、表や数式の作成などを支援しますが、利用には対象のプランが必要です。
最新の対象条件と機能はGoogle公式のGemini利用案内で確認してください。
ExcelファイルをGoogleスプレッドシート形式へ変換して使う場合も、数式・日付・選択肢・保護設定を再確認します。
ファイルが開くことと、元と同じ計算・操作ができることは別の確認です。
必要な列は決まっていても、数式や入力ルールの組み方で迷っている方へ。実際の仕事に合わせて、試す範囲から整理します。
正常値以外でも計算を試す
まずは三件の架空案件で手計算と照合する
確認用の判定日を2026年10月23日に固定し、次の三件を用意しました。
実際の顧客情報や運用実績ではありません。
| 案件 | 入力した条件 | 期待する結果 |
|---|---|---|
| PJ-001 | 期日10月22日、進行中、予定6時間、実績7.5時間 | 差分1.5時間、期限超過 |
| PJ-002 | 期日10月28日、未着手、予定4時間、実績は空欄 | 差分は「未入力」、期限超過にはしない |
| PJ-003 | 期日10月23日、完了、予定0時間、実績0時間 | 差分0時間、期限超過にはしない |
判定日を固定すると、翌日に開いても同じ条件で比較できます。
運用時にTODAYを使う場合は日付が変わるため、確認時の基準日とタイムゾーンも記録しておきます。
今回の確認では、空欄と0を区別する処理を調整しました。
数式を短くすることよりも、「未入力」と「実績が0」を別の状態として返すことを優先しています。
空欄・重複・日付・追加行を試す
検証用の表では、次の変更を一つずつ加え、結果を確認してから元に戻しました。
複数の条件を一度に変えると、どの入力が原因だったか追いにくくなります。
| 試した条件 | 確認する結果 | 今回の確認結果 |
|---|---|---|
| 正常値・空欄・0を含む三件 | 差分1.5、未入力、0を区別する | 期待する三つの結果と一致 |
| 基準日の期限判定 | 期限超過がPJ-001の一件になる | 1件と一致 |
| 追加行へPJ-001をもう一つ入力 | 両方の行が重複になる | 重複行数2と一致 |
| 重複用に追加した行を空に戻す | 重複の表示が消える | 重複行数0と一致 |
| 期日に「不明」と入力 | 日付として計算しない | 「日付確認」と一致 |
| 実績時間に-1を入力 | 負の時間を差分計算へ通さない | 「入力確認」と一致 |
| 追加行へ予定2・実績3を入力 | 追加した行にも数式がある | 差分1と一致 |
| 判定日を10月29日へ変更 | 未完了の二件が期限超過になる | 2件と一致 |
これらは、記事用に作成したXLSXの検証モデルを、ローカルの表計算エンジンで再計算した結果です。
ExcelアプリやGoogleスプレッドシート上の操作、共有権限、AIによる生成精度を実測した結果ではありません。利用先へ移す際には、同じ入力で再確認してください。
この例は100行分の数式と判定範囲をあらかじめ用意しています。
101件目を入力しても自動で範囲が広がる設計ではありません。入力欄の追加時には、計算式、重複判定、集計、選択肢、保護範囲をまとめて確認します。
日付として計算できることと妥当な期日は別
日付の欄に数値を入れると、表計算ソフトでは日付として解釈される場合があります。
「数値だから計算できる」という判定だけでは、業務上おかしな過去日や将来日まで止められません。
実運用では、受付日より前の期日を許すか、何年先まで受け付けるかなどを決め、入力規則や確認欄を追加します。
案件IDや担当者の未入力、許可していない状態、範囲外への貼り付けも、運用開始前の追加テストに含めましょう。
共有と変更を管理する
数式の保護と閲覧権限を分ける
数式欄を色分けするだけでは、誤って上書きする操作を止められません。
入力担当はA〜F列、数式の変更は管理担当というように役割を分け、計算列の編集を制限します。
Googleスプレッドシートの範囲保護は、編集できる場所を制限する機能です。
機密情報を閲覧できなくする仕組みではなく、共有相手がコピーや書き出しを行える場合もあります。詳しくはシートと範囲の保護に関する公式説明を確認してください。
担当者に見せない顧客情報を、非表示の列に置くだけで済ませないようにします。
閲覧範囲を分ける必要があるなら、共有するファイルや利用するシステムから検討します。
| 担当 | 行える操作の例 | 利用開始前に試すこと |
|---|---|---|
| 入力担当 | 案件の入力、状態・実績の更新 | 入力欄は変更でき、計算欄は変更できないか |
| 管理担当 | 列・数式・判定条件の変更 | 変更前に複製し、テストをやり直せるか |
| 閲覧担当 | 状況の確認 | 編集権限を与えずに必要情報を確認できるか |
上の表は権限設計の例です。
今回の検証用XLSXに、共有権限やパスワード保護を設定したという意味ではありません。
変更履歴と引き継ぎの説明を残す
列を追加した人しか数式を理解できない状態を避けるため、運用メモも用意します。
表の目的、一行の単位、時間の単位、期日の判定条件、対応行数、変更担当、確認日を記録します。
数式を変更するときは、変更前のファイルとテスト結果を残します。
「期限超過から保留を除外した」など、集計の意味が変わる修正は、表示される件数の違いも利用者へ伝えます。
複数の部署で異なる閲覧権限が必要になったり、承認履歴を厳密に残したりする場合は、表計算だけで運用を続けるべきか見直す時期です。
まずは小さな表で要件を整理し、業務に必要な権限や履歴を維持できる方法へつなげます。
よくある質問
AIが作った数式はそのまま使えますか
説明が自然でも、参照する列や集計範囲が違う場合があります。
手計算で答えが出せる少数のデータと、空欄・0・重複・追加行を使って確認してから採用してください。
ExcelとGoogleスプレッドシートで同じように使えますか
共通の関数があっても、ファイルの変換や機能の違いで確認が必要です。
数式の結果に加えて、日付、選択肢、条件付き書式、保護、共有権限を利用先で試します。両方で使うなら、正本をどちらに置くかも決めておきましょう。
顧客情報をAIへ渡して作成してもよいですか
最初の設計と数式の確認には、架空の案件名や担当者名で十分なことがあります。
実データを使う必要がある場合は、社内の利用ルールと契約するAIサービスのデータ取扱条件を確認し、必要な項目だけを使用します。
一つの判断ができる表から始める
まずは「期限超過を確認する」など、表を見て判断したいことを一つ選びましょう。
一行の意味と入力ルールを決め、AIが作った案を少数の架空データで確かめると、修正すべき点が見つけやすくなります。
アセントウェブでは、AI顧問サービスで、業務の整理やAI活用の進め方をご相談いただけます。
現在の管理表と困っている操作を整理するところから、必要な仕組みを検討します。
表を作った後の入力ミスや引き継ぎまで考えたい方へ。現在の管理表で困っている点をもとに、改善する範囲を一緒に整理します。

